短期集中連載 IGFアテネリポート−〈市民〉のインターネット− 第5回
第5回 インターネットの多様性にむけて(2)
レポートの方は一応終わりましたが、一つまだ終わっていなくて、かつどうしても書かせていただきたくてしょうがないことがあります。このレポートでも欠番になっている、第5回、インタビューの続きです。時期はずれになってしまい、大変恐縮ですが、お二人のお話があまりに興味深く、含蓄に富んでいるので、ぜひとも掲載させていただき、みなさんと共有したいと考えております。
なお、わかりやすさに寄与するために、表現の一部に変更を加えているところ、および省略しているところがあります。著者が内容を理解した上で表記したため、誤解や不明瞭な所を含め、その責任はすべて著者にあることも、お断りしておきます。
それでは、料理のお魚が出てきたところからです。
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- Diversityの議論がDiversityになってはいけない
上村: 日本経団連が今回のIGFで、大がかりなミッションを組んでやってきているみたいですけど、何を目的としているんですか?
前村: あんまりよくわからないんですけど、総務相から、ちょっとトラックしてくれよと言われているみたいですね。僕自身としては、国内ミッションで集まって話したり、今回のようなことをやるというのは、とても重要なことだと思うんです。日本国内でもできないことが、世界でできるわけはないし。
J: なるほど。経団連の関連の方々は何人ぐらいいらしてるんでしょうか?
前村: 経団連ミッション、純粋に経団連の会員組織というところは、4,5社ぐらいですかね。あとは経団連の事務局の方と。企業の方はもう少しいるかな? (日本の)マイクロソフトの方もいらっしゃってるし。
J: そう考えると、ずいぶん規模の大きい充実した会議になっていると言って良いんでしょうか?
上村: IGFは2009年まで続くことが決まっていて、ブラジル、インド、エジプトの順に開催されると開会式で言ってましたけど、この調子で続けてみて、あまり意味が無いんじゃないかと、実は危惧してるんですけどね。
J: でも、集まることに意味があるというのはありませんか?
上村: もちろん集まることには意味があるんでしょうけど、目的がはっきりしないと求心力も失っちゃいますからね。何かを決めるとか決まるとかであればいいんですが。
前村: 何か明確なビジョンができたら、それを持ち帰ることに意味があるんですけれどもね。たとえ何か決めるということにならなくても。そのようなビジョンの共有を狙わなくてはいけない。というのは、気がつくと思うんですよ。来年になったら。「この調子じゃいけない。何が足りないんだろう」と。セキュリティだったら、最初からマルチステークホルダーでは決まらないというのもあるので、誰かがきちんとたたき台を作っておいて、後は組み立てるとか。色々工夫のしようはあるんじゃないかなとは思うんですよ。
上村: ええ。ただ、温度差があって、参加者の中には「これでは何も決められないよ」という人がいますよね。そういう意見には積極的に反論しにくいですね。
前村: 私も反論しませんから(笑)。やっぱり、何らかのミッションを持ってきているのであれば、こういうフォーラムはやりにくいと思いますよ。ミッションをもっているということは、明確な成果が上がらないと、報告書とか書けませんからね。
J: でも、例えば「多様性」なら方向性が出せるんじゃないでしょうか。セキュリティは技術的な問題なので、難しいと思うのですが、多様性ならマルチステークホルダーになるのではないかな、と思って。
上村: 僕はそこは個人的にはマルチステークホルダーの時代ではもうないんじゃないかなと思ってるんです。
J: おお、おもしろいですね。
上村: 先ほどの言語の話だけではありませんが、アクセスのデジタル・ディバイドの解消って、商業的にやれないことが残っていて、それをどうしようか、という話じゃないですか。でも、商業的にやれないんだから、それは補助金みたいにやるしかない。もちろん商業的以外でやりたいという人がいたら、それをどのようにサポートしてのかというのはあり得るんだけど、それも商業的には上手くいかないんじゃないかと思うんです。このように考えたなら、プレーヤーは限られてくるんじゃないかと。同じようなことが言語にも言えて、すでに商業的にやって儲かるところはやられているわけです。
J: うーん。なるほど。
上村: ということは、残っているということは、商業的には上手くいかない部分ということになります。そうすると取るべき点は決まっていて、要するに誰が金と人を出すのかということになるでしょう。それなら問題は、それをどのようにやるのか、ということにしかならない。例えばオープンソースでやってお金をどこかから持ってくるとか、ビル・アンド・メリンダ財団(マイクロソフトのビル・ゲイツが作った財団)からお金を出してもらうとか(笑)。
前村: (笑)なるほど、それはよく分かりますね。
上村: 多様性、Diversityと言いますが、議論がDiversityになってはいけないと思うんですよ。
一同: (爆)
前村: 上手いですね(笑)。確かにそうですね。確かに具体的に言うと、やらなくちゃいけないことは決まってますよ。その方法論がいくつか選択肢があるぐらいのことで。そこは市場が成功しない領域ですしね。
上村: さらにいえば、市場が成功しないと言ってしまうのも、ポリティカルに問題なのではないかと思うんですけど(笑)。
前村: ふふふ、そうですね(笑)。でも、結構いろいろな人が、「市場は失敗した」とか言っていますよ。一日目とか。あれだけたくさんの人が言ってましたからね。「そうか、市場の失敗ってあんなに簡単に” Market fails “っていうのか」って驚くほど。
上村: じゃあ、いいのかなあ(笑)。
前村: いいんじゃないですか(笑)。ただ、そこを、マルチステークホルダーでする意味はありませんよね。
上村: 興味がある人たちが集まってやる、というだけでは、息の長いものにはなりませんし、埋まるものも埋まらないんじゃないかとは思いますね。
- “Google”なヴィント・サーフ
J: 他の機関やパネラーの方々はいかがでしたか?
上村: パネラーどうしでもおもしろいことがあって、例えば隣に座っていたUNESCOの人とはなんか相性が良くなくて(笑)。明日一緒にパネラーになることを知っていたので、昨日の部会でいきなり捕まえて、IDN(著者註:国際化ドメイン名。多言語でのドメインのこと)ってヴィント・サーフは否定的なんですかね、って聞いてみたのがよくなかったのかなあ(笑)。
J: あ、IDNの話もなさったんですか?
上村: いえ、昨日のワークショップでヴィント・サーフが、IDNの問題について色々言っていて、「そもそもIDNで書かれたら他の言葉の人は読めない」とか、「検索してるんだから別にドメインネームじゃなくても良いんじゃない?」とか、いくつか言っていたので「ヴィントあんなこと言ってるけど、あれはクリティカルに言ってるのかな」って、UNESCOの方に言ってみたんですが、「いや、そんなことは無いとは思うわよ。本人に聞いていたら良いんじゃない」って返されて(笑)。それはそうなんですけどね(笑)。
前村: ふふふ、まあIDNは、好き好んでというか、好きでやっているネタですよね。ヴィント・サーフ的には(笑)。
J: そうなんですか。
前村:ええ、ドメインネームもそうだし、多言語化全体として。
上村: こういう問題だから、あまりお勧めしないということでは無いんですね。
前村: それよりは、やってみたらこういう問題がでてきた、ということでしょうね。MCIに雇われる前に、そういう仕事やってたんですって。これは『IPv6style』にヴィントが日本に来たときの記事が載っていて、そこに全部書いてあるんですけど、それによると、そういうことでGoogleみたいな仕事はいつかやってみたいと思っていたらしいですよ。」
上村: “Googleみたいな仕事”、っていうのは、ロビイストですか?(笑)
一同: (爆)
前村: (笑)、エヴァンジェリストやってりゃ金になるんですからいいんですけど。まあ、ネットワーク系じゃないっていう意味ですけどね。Googleのようなアプリケーション系ということです。それは僕にとっても「なんだ?」って思いましたし。ただ、言葉の端々に“Googleっぽさ”が出てきてるのがおもしろいですよね。例えば、「インターネットはこれまでに類を見ないアーカイブなんだ」って言ってましたよ。”distributed digital archive”だって。うわー、その捉え方は“Google”だなって思いました(笑)。
上村: 話はちょっと違うんですけど、アメリカの「ネットワーク中立性」の話で、ヴィントが、まあアメリカには消費者にブロードバンドの選択肢が無いという前提でなんですが、「ブロードバンドプロバイダにも、コモンキャリアとしての義務を課すべきだ」、と言ってましたよ。それは選択肢がないからという理由で。えー、と思いましたけどね。確かにGoogleに移られてからは、ずいぶん刺激的な話をしているように感じますね(笑)。
前村: まあ、「ネットワーク中立性」の遡上に上げられちゃってますからね。僕は「ネットワーク中立性」って、頭の中でピンとこないんですよ。
上村:日本とアメリカとでは事情が全然異なるというのもありますからね。結局アメリカでも、なにか話したいことを「ネットワーク中立性」という言葉で隠して議論している、というのもあって、要はケーブル対電話屋の話であったりとか、誰が次の10年のシェアを取るかとか、という話が、あの問題に隠されている。だから、通信と放送の融合のように、ネットワークプロバイダが流すようになるのか、ケーブルが流すようになるのか、そういった問題が裏に隠されているんですね。その意味で、「ネットワーク中立性」という言葉の裏の問題が共有されていないと、日本では同じ議論にならないと思うんですよ。
- 「おまえこそ誰だよ」
J:そういえば、今回のIGFでは「ネットワーク中立性」の話は出ていましたっけ?
上村:出ることがあるとしたら僕は昨日の「Openness」のセッションだったと思うんですけど、なんか人権の話とかが中心でしたね(笑)。
前村:「Openness」でなんでそこまで、っていうのはありましたけどね(笑)。
J:全体的に「Openness」はどうでしたか?
前村:とっちらかってましたね(笑)。
J:大騒ぎになってましたよね。
上村:中国バッシングになってたりとか。確かに良くないところがある、というのはあるんですが。怒られてもしょうがないところがある、のかもしれません。
前村:中国の政府だけでなく、中国の人に聞いたときにも「いやいやフィルタなんてしてないよ」って、大まじめに言われましたもん。
J:ええ〜?
前村:本当に、そう思いこんでるんじゃないかと、こっちがおもっちゃうぐらい大まじめにですよ(笑)。
一同:(爆)
前村:もちろん、100人に聞いてみたわけではないんですけど(笑)。
J:みんなそう言いますか?
前村:言いますね。何ででしょうね(笑)。
上村:中国って、勝手にメールの中継サーバ置いて、勝手にエラー出すじゃないですか。「このドメインはありませんでした」とか。嘘つけ、あるのは知ってるんだよって。こっちからすると、だいたいあなたみたいなサーバを知りません、っていう感じなんですけどね(笑)。
J:おまえこそ誰だよ、状態ですね(笑)
上村:だから否定されても、ふーん、そうなんだ、という感想しか持ち得ませんよね。
J:中国では、日本語のWikipediaで読めない部分がある、という話があったりしますよね。
前村:Wikipediaだったかな、確かに中国にいると見えないサイトはあるらしいですね。
J:中国における表現の自由で言われるのは、政府などの規制する側の問題もさることながら、利用者であるユーザーに対する教育という問題についてですね。「IGFレポートblog」でも少し取り上げたんですが(第3回)、ユーザー側が教育を受けることで、表現の自由の重要さとか、自らの権利などの意識が出てくる。ただ現状は、高等教育されている人たちは、英語が話せて、その恩恵を受けている人ばっかりなので、母語のネット上の位置に関心を持たない、という傾向もあると思うんです。そこで質問なんですが、言語的多様性の文脈でも良いんですけど、「おまえら、英語を話せよ」っていうのは、無いんですか?
上村:ありえますよね。開会式で、ブルガリアの大使も公務員向けの英語教育に力を入れていると言ってましたね。
前村:そうですね。言ってました。
J:言語的多様性の問題は、単に「自国語をネットに載せるかどうか」だけではなく、「英語も使うかどうか」が、大事な気もしていて、ぐずぐずしていると、みんな英語を使うようになっちゃって、声の大きい人はみんな英語をしゃべると。一方で、ほんとに英語がしゃべれなくて困っている人とか、後は言語障害を持っている人とか、言葉さえ何とかなれば、ネット上でも色々表現できる人ですね。そういう人が苦しむ状況になっちゃう気もするんですけど。例えば、UNESCOなんかはどうなんですか?
上村:先ほどご一緒したUNESCOのパネラーの方もおっしゃってましたが、初等教育は基本的には、母語で、自分が生まれながらに習得した言語で行うことを推奨していて、そういったプログラムとかプロジェクトを実施したり、お金を出したりしていると思います。ただ、高等教育になるとその可能性はどんどん狭まってきて、英語やフランス語などの旧植民地の言葉になっちゃいますね。そうすると、初等教育を母語でするということは、その分ぐらいは多言語化が必要なんじゃないか、と僕なんかは思いますけど。初等教育でもITは使うわけですよね。そこからいきなりフランス語では、やはり母語の価値を貶めてしまうんではないか。その辺が“折り合い”になってくるんじゃないかとは思いますね。
J:家で使う言葉と学校で習う言葉が違ってきちゃう、ということにはならないで済みますかね。例えば卑近な例なら「名古屋弁で書かれた教科書も欲しい」とか(笑)。
上村:そこは難しい問題ですね。日本語と英語ぐらい離れていて、「二つの言語」とはっきり言えるならいいんですが、方言となるとね。
前村:方言の問題は難しいですね。例えば、地域の価値は大切にしなければならないということで、方言は残すべきだ、という考え方はあるんですね。一見まっとうに思えるんですけど、地方出身者としては、それを東京生まれのおまえに言われたくないよ、と思いますね(笑)。
上村:東京の人は、もう少し東京以外にも人がちゃんと住んでいることを自覚するべきですね(笑)。大阪では小学校でも大阪弁で学んでるんだぞ、ということをね。
前村:地方のことはすぐエキゾチズムなイメージに結びつけちゃってね。頭では知ってても、意外とわかってない人が多いですね。
上村:そういうのがわかってないと、すぐ日本を均一なイメージで考えちゃうんですよね。
- 心はこもってる?
J:IGFのような国際会議への参加はあまりしたことがないのですが、個人的には、名古屋弁とまでは言わなくても日本語が国連の公用語になってくれないかな〜と思いました。そしたら自分も質問とかできるのにな、って。まあ、何を聞けばいいのかよくわからないのですが(笑)。でも、IGFには日本の人、結構来てますね。
前村:まあ、力はいっちゃいますよね(笑)。経団連の人たちも、ミッションを組んで来ていますし。
J:発表する人はどのくらいいるでしょうか。
上村:4つあるメインセッションのうち、3つに日本人のパネラーやモデレータがいますからね。少なくはないでしょうね。
前村:オープニングセッションでも、内海さんがいましたからね(笑)。
J:ITUの事務総局長(当時)だった内海善雄さんですね。私には発表の内容がぜんぜんわかりにくくて、困ったのですが、発表の後、司会の人になんか言われてしまってましたね。「哲学的に造詣が深いですねえ〜」みたいに(笑)。
上村:ソクラテスがどうたらこうたらとか(笑)。
前村:「ソクラテスは死んだ。」って言ったとき、会場がざわめいてましたね(笑)。
一同:(笑)
J:私はoverpass(本会議場への入場証)がなかったので、別の部屋で画面で見てたからかもしれませんが、あのスピーチ、意味がわからないんですよね。
前村:二重否定とかが多かったみたいですね。反語的に置いている“枕”が強くて、後ろが弱いもんだから、批判してるんじゃないかって聞こえて、びっくりしてる人もいそうですね(笑)。
J:(笑)。ちょっとお聞きしたいのですが、ITUっていうのは、インターネットの管理に興味はもってるんですよね。
前村:いや、すごい持ってますよ。今日の朝ご飯の時に、ICANN(IPアドレスやドメイン名などのネットリソースの調整・管理を代表する組織)とRIR連合(世界を5つに分けてネットリソースの配分と管理をおこなっている各地域の組織)の関係者がミーティングしてたんですよ。みんなで。そんなところで、そっちの方のテーブルに座ったのがZaoさんで。
J:ITU-TやTSB(ITUのうち電気通信の標準化をしているところ。ネット管理も狙っている)のZaoさんですか?
上村:で、後ろで聞いてたと(笑)。
一同:(爆)
前村:「いる、いる」って、ざわざわとなっちゃいましたね(笑)。
一同:(爆)
前村:で、IPv6(IPアドレスの主要規格であるIPv4の次世代版とされている規格)については、ITUをヘッドとして、国家ごとに管理をするんだと。そして今のRIRが提供しているシステムと競合的にやるんだ、って思ってるみたいですよ。
J:え、そうなんですか? ネットを管理するシステムが2つできて、競争しあう、って考えてるわけですか?
前村:そういえば、別の中国の人にも言われましたよ。「競争してお互い良くなっていこう」、って。よくこの人たちこんなこと言えるな。って思うんですけど。っていうか、共産主義の国の人にあまり言われたくない気がするんですが。
一同:(爆)
上村:心がこもってない、って感じですね(笑)。
J:下心はこもってそうですね(笑)。でも、本当にそんなことできるんですかね? IPv6を自分たちの手におさめて、競合するって。
前村:いや、彼らが騒いでも、現に私たちが運用しているものですから、競合というのは変で、それを「手放せ」ということが前提になるんでしょうね。
上村:ないしは、本当にできると思ってるのかもしれませんね。やる気があればできる、と。中国の例で言えば三峡ダムでも、建設のためには200万人移住、ぐらいのことはやりますからね。
J:平然とやりましたからね。
上村:まだ考え抜いているわけではないでしょうけれども。ネット管理の競争、っていうのは、影響が大きすぎるし、本当に実現可能なのかどうか。
J:ただ、企業としては、中国のマーケットとしての大きさに目を奪われて、何も言えなくなっているところはないですかね。企業の連合体という性格が強いITUも、そんな感じになっているのかなと危惧してるんですが。
前村:どうでしょうか? 例えばキャピタリストの人から聞いた話だと、中国に事業として入っていく、っていうのは、なかなかYesと言えないものがあるみたいですよ。リスクがあるし、失うものもあるから、結果的に全体としてもうかるかどうか、というところで見るわけですからね。Googleは行けたかもしれないけど、なかなか手を出せないなあ、って。
上村:Googleなんかは、多少儲からなくても、全世界にある、という方が大きいでしょうから。
J:Googleも失ったものは多そうですけどね。
- 「上手いやり方」を一緒に
J:そろそろ時間になってきましたので、最後に、今回IGFに参加なさってみて、どう思われたか、その結果、今後どんなふうにしたいか、そういった将来に関して思われたことなど、ありますか。
前村:僕としては、今回IGFに来てみて、ここが多分に“国連”であり、発展途上国支援であり、という文脈が強かったと感じましたね。なので、なんかの仕事として追跡することはあるかもしれないですかど、IGFという場からインターネットの資源管理とか、インフラをどうにかする、という文脈で、僕たちがならなくちゃ行けない仕事はあまり無いんじゃないか、とは思いました。ただ、こうやって政府も出てくるっていうことは、一般の方がインターネットがこうなって欲しいという意見を代弁しているということにもなっている訳だから、そういったことを念頭に自分の仕事を進める、ということになると思います。いろいろな形で、メッセージが出てきていると感じることができたので。
J:国連の場というのがそうだと思うんですが、前村さんの立場ですと発展途上国の側から、やはりクレームを申し立てられる側になってしまうと思うんです。一方で私たちの側から言えば、自由や利便性、セキュリティなど、前村さんたちに守ってもらいたいものもあると思うんです。そのへんも“折り合い”なのかもしれませんが、どう思われますか。
前村:この辺は経団連の方々に似ているのかもしれませんが、やはり日本が、自分のところがしっかりしなければならないと思っています。一方で、発展途上国の利用者のリテラシーが低いことでセキュリティが上手く保たれないという面があるかもしれませんから、ここはなんとかしていかなければならない。その辺が一番興味を引かれるところでしたね。例えばAPNICでも一生懸命、発展途上国でトレーニングやったりワークショップやったりしていて、お金も民間としてできることはできるだけやっていると思います。
J:APNICはアジア太平洋地域全体を管轄していますから、日本、オーストラリア、韓国のような先進国から、発展途上国のような地域まで幅広いですからね。
前村:今、インドあたりがどーんと立ち上がってきていますが、他にもまだまだ教えていかないといけないところがあるんでしょうけど、その辺もうまくできていて、SANOG(South Asian Network Operators Group。南アジア地域のネットワークオペレータの情報交換グループ)のようなところが、ちゃんとインターネットを繋ぐための教育プログラムを用意していて、うまくやっているんですよね。インド亜大陸のあたりは英語のリテラシーがあるので、直接的に英語の情報が取れるんですよね。じゃあ日本ならどうかというと、僕もやっているJANOG(日本ネットワーク・オペレーターズ・グループ。日本におけるネットワークオペレータの情報交換グループ)からすると、ちょっとうらやましいぐらいですけどね。後、インドや南アジアだと、一部のエリートは移住して例えばシスコの偉いエンジニアだったりするわけですよ。そういった人たちが故郷に錦を飾るっていうか、次は祖国のためにとおもってやってるというのもありますね。
J:SANOGは資金源はあるんですか?
前村:資金源はスポンサーシップでどうにかやってると思います。SANOGでは前回の8月のミーティングがパキスタンであって、しゃべらせてもらったんですけど、そういったところでは協力は惜しまないでやろうと思っています。
J:なるほど。そうするとインドにしても、中国もそうかもしれませんが、これからユーザーが飛躍的に増大するわけですよね。そうすると発言力もどんどん増していって、大きな変化を求められるじゃないか。そのあたりが現在の日本のユーザーとしては心配になるんですが。
前村:インターネットインフラの運営という点で言えば、今までそれなりに上手くやれてきていたものなので、その「上手いやり方」というのを彼らにも理解してもらって、同じようにやっていってもらう、というのが一つのテーマなんですよ。「知らなかったからこっちの方でやりました」というのでは困るので。
J:それはそうですよね。同じようにできているからインターネットになっているのであって、新しいからと勝手な方法をとられては混乱してしまう。
前村:例えば「ちょっと酒飲みに行こうぜ」って誘ったりして。結構一生懸命ですよ(笑)。
J:なるほど。それは大事ですね。それらの積み重ねが、将来にわたるインターネットの安定を生むと言えるかもしれませんね。。。長い時間取っていただいて、本当にどうもありがとうございました。
APCはこのようなミーティングで、またはon-lineで議論を積み重ね、IGFの現状を細かく把握し活動したり、CSを代表して次々と報告者を立てたりしているわけですね。エヴリバディ、ウェルカム!みたいなところもあって(まあ、知り合いしか出入りしないのですが)、どんどん意見を述べ合うフレンドリーな雰囲気は、まさに「参加」というものを体現しているように感じます(ちなみに中央に座っているのが我らが浜田代表です)。JCAFEはAPCメンバーとしてこのフォーラムに参加していますが、このblogでもAPCに協力してもらった企画を考えています。今、浜田代表と調整&準備していますので、どうぞお楽しみに。